2011.01.26

JAGDA新人賞2011総評(記:佐藤卓2011年鑑編集長)・展覧会情報

受賞者 :大黒大悟・高田 唯・天宅 正/以上3名(50音順)

作品発表:年鑑『Graphic Design in Japan 2011』(2011年6月発行予定/六耀社刊/予価15,750円)
授賞式 :2011年6月11日(土)東京ミッドタウン〈2011年度JAGDA通常総会会場にて〉

展覧会 :「JAGDA新人賞展2011 大黒大悟・高田 唯・天宅 正」
    
2011年5月31日(火)〜7月1日(金) 東京・クリエイションギャラリーG8 詳細
2011年7月11日(月)~21日(木) 大阪・平和紙業PAPER VOICE  詳細
2011年7月25日(月)~31日(日) 滋賀・ 成安造形大学 ギャラリーアートサイト  詳細
2011年11月19日(土)〜27日(日) 新潟・新潟県立近代美術館 ギャラリー 詳細
2012年2月29日(水)〜3月5日(月) 愛知・国際デザインセンター・デザインギャラリー 詳細

新人賞展ポスター


JAGDA新人賞2011総評(記:佐藤 卓2011年鑑編集長)

新人賞はJAGDAの未来を示唆している。なぜなら、ここから多大な影響を受けたこれからを担う若いデザイナーが、その後JAGDAのメンバーになる可能性がおおいにあるからだ。そのような意味で、選考する側にも受賞する側にも大きな責任がある。つまり敢えて言うまでもなく、選考委員全員がそれぞれJAGDAはどうあるべきかという未来のビジョンを持っていなければならず、新人賞を受けた者は今後グラフィックデザインの未来を切り開いていく責任を負うということだ。そしてその気概が、少なからずこれからの日本のグラフィックデザインに大きく影響することだろう。つまりJAGDAの新人賞を受けるということは、先輩から「あなたも日本のグラフィックデザインを牽引する1人です。よろしく!」と言われていると思えばいい。
そして、今年も昨年に続き厳しい選考の末、新人賞は3名に決まった。大黒大悟(31)、高田 唯(30)、天宅 正(32)といずれも30代に入ったばかりのまさに新人である。最終選考段階では選考委員全員、異議なく得票数により決定に至った。

大黒大悟
大黒大悟の作品は11点が選ばれていたので、これも多くの選考委員が作品全体として充分力を感じることができたように思う。ポスター、小型グラフィックそしてシンボルマークなど、作品それぞれも広範囲に渡っていて、多様な力を見せている。特に良品計画のXmas世界キャンペーン用映像が、他のグラフィック作品に加えて、更にまた別の実力を見せてくれた。




高田 唯
高田 唯の作品は新人賞選考会の段階で9点の作品が選ばれていたが、どれも繊細でユニークである。B1ポスターも選ばれているものの、選考会の場での発言では、特にブックデザインや小型グラフィックなどの小さな物がいいコメントを得ていた。それぞれ圧倒的に強いという印象のものではないが、小さな世界を丁寧につくっているところが、今後の期待に繋がったように思う。




天宅 正
天宅 正の作品は7点が対象として選考された。この作品の中では、何といっても「KUDAMEMO」が実力を見せつけていたように思う。まずメモ用紙としてのりんごと洋梨の立体作品が秀逸であった。それをイメージポスターとして丁寧に展開しているところも効果的に見えていたように思う。今後この賞をきっかけに、自社ブランド以外の仕事においても広く実力が活かされることだろう。



新人賞の選考を通して、候補に挙がった作品全体に感じたことがひとつある。それは、正面から向き合うのではなく「ハズしている」作品が多いということだ。これが昔からひとつの日本の文化であると言ってしまえばそれまでだが、後者の傾向がはたしてJAGDAの未来を示唆している人達の作品全体に感じとれてしまっていいのだろうかと思う。ハズしているものは、中心があって初めて際立って見える。つまり際が立って見えるのである。何か、多くの若いグラフィックデザイナーが際を目指すことに固執していて、中央がポッカリ空いていくような傾向を感じるのははたして私だけだろうか。個人的にも、ハズしている作品にやはりとても魅力を感じるが、JAGDAの新人賞を獲ったら、今一度グラフィックデザインが社会においてどうあるべきかを考えるきっかけにされるといいように思う。


選考経緯

・年鑑『Graphic Design in Japan 2011』に出品した、新人賞対象者233名(2010年10月31日付で39歳以下のJAGDA会員)のうち、各カテゴリー選考(10票満票)において「8票以上得票の作品が1作」または「6票以上得票の作品が2作以上」の条件にかなう出品者29名をノミネートとした(注:入選ボーダー票数がカテゴリーによって違うため、出品数の最も多いポスターを基準カテゴリーとし、各得票スコアをコンピュータで補正したスコアを使用)。
・ノミネート会員は次の通り。
上田 亮、小野勇介、金坂義之、鎌田順也、川上恵莉子、喜多昭夫、白澤真生、杉山紘一、杉山ユキ、
大黒大悟、峠田充謙、高田 唯、高谷 廉、竹林一茂、立石義博、田部井美奈、玉置太一、天宅 正、
原野賢太郎、藤井 圭、藤本康一、増永明子、松本健一、三浦 遊、宮内賢治、宮田裕美詠、宮脇 亮、
八木義博、山本和久(以上29名/50音順)
・ノミネート会員の全入選作品を会員ごとにまとめ、一般グラフィック選考委員19名(1名/森本氏が都合により欠席)がひとり5票までの投票権を持って、用紙記入方式で1次投票を行った(出品会員氏名は非表示)。その結果、4票以上を取った上位9名(小野・鎌田・喜多・大黒・高田・天宅・原野・宮田)を最終候補とすることで意見が一致した。
・ 9名を候補に、前年の方式に従い選考委員ひとり3票までの投票権を持って、それぞれ1位~3位の順に出品者番号を記入し(選考委員全員が3名を選出することが条件)、1位=3ポイント、2位=2ポイント、3位=1ポイントの計算で投票を行った。
・ その結果、大黒氏(24ポイント/11票)、天宅氏(20ポイント/9票)、鎌田氏(19ポイント/8票)、高田氏(17ポイント/8票)の4名が得票上位となった。ここで決定方法について、選考委員から様々な意見が出された。協議の結果、共に8票を獲得しポイントが僅差であった鎌田・高田両氏について、選考委員ひとり1票の投票権を持って決選投票を行い、高田氏が11票、鎌田氏が8票を得票した。
・ この結果により、得票上位の大黒氏、天宅氏、高田氏の3名を新人賞とすることを決定した。